永久歯の先天性欠如

永久歯の先天性欠如について

最近、「子供の歯の本数が少ないのでは?」
「検診で歯が少ないと言われ、どうしたら良いですか」
という相談が多くなっています。
何らかの原因で、永久歯がない状態を「先天性欠如」と言います。

乳歯は一般的に、5~12歳で永久歯へ生え変わります。
しかし、生まれつき永久歯の本数が少ないと、一部の乳歯が抜けず大人になってもそのまま残ることがあります。

日本小児歯科学会の報告によると、10人に1人の割合で先天性欠如が見つかりました。全国7大学病院の小児歯科が中心となり2007年から2008年に実施した国内初の大規模調査で虫歯などで歯科を受診した7歳以上の子供1万5544人のレントゲン写真を
精査した結果、10.1%に当たる1568人に先天性欠如がみられました。

永久歯はお母さんのお腹の中にいるときから顎の骨の中で形成されます。
レントゲン写真を撮ると、永久歯の本数がわかりどの場所に永久歯がないか診断できます。
7歳の段階で、レントゲン写真で永久歯の芽(歯胚)が確認されないと、約99%の確率で欠如すると言われています。
一部の先天性欠如は遺伝ですが、大部分は原因不明です。
欠如は上顎より、下顎に多くみられ特に下顎の第2小臼歯の欠如率は左側3.26%、右側2.84%でした。

永久歯の欠如の影響はいろいろで、乳歯がそのまま残ることもありますが乳歯が抜けた後にそのままにしておくと隣の歯が移動したり、歯並びや咬み合せが悪くなります。
また食べにくいことから、反対側の歯ばかり使っていると顎の骨の発育にも影響が出て顔がゆがんでしまうこともあります。

では、先天性欠如が見つかった場合、どうしたら良いのでしょうか。
この場合、長期的な経過観察が大切です。
適切な時期に適切な処置をする必要があるので定期的に受診しましょう。
歯が足りないからといって、すぐにブリッジやインプラント治療をすると成長過程の歯や骨に悪影響を与えてしまいます。
いずれかは治療が必要になってくるかもしれませんが、タイミングが重要です。
当院の治療方針を紹介します。

治療方法

※奥歯の本数が少ないとき※

方針1.タイミングをみて乳歯を抜歯する

第2大臼歯が生えてくる12歳前後の時期に乳歯を抜歯します。
後方の永久歯が生えてくる力により、大臼歯が前方に移動し、抜いた1本分の隙間が減少していきます。
この隙間は完全にはなくならず、歯と歯の間に2ミリくらい開いた状態で止まることが多いです。

方針2.矯正治療をする

乳歯を抜歯して矯正治療を行い、周囲の歯を動かすと抜いた隙間をなくすことができます。方針1と同じタイミングが最適な開始時期ですが大人になってからでも治療可能です。

方針3.このまま経過観察する

抜歯せずにこのままにしておきます。虫歯がある場合は詰め物や入れる治療をします。
将来乳歯が自然に抜けた場合は、そのままにするかインプラントやブリッジなど何らかの物を入れることになります。

※前歯の本数が少ないとき※

ほとんどの場合、前歯の乳歯は自然に抜けて隙間が空いた状態になります。

方針1.そのまま経過観察する

犬歯、小臼歯が生えてくると、歯の位置が変わり隙間が狭くなってくることがあります。
ただし、ほとんどの場合大人になっても前歯の隙間は残ります。

方針2.矯正治療をする

ある程度永久歯が生えてから、矯正治療を行い隙間や歯並びを治します。
上下のバランスを整えるために永久歯の治療が必要になることもあります。

方針3.人工の歯(補綴物)を入れる

成人ではブリッジや歯の貼り付け、インプラント治療で隙間を埋めることもあります。

『このままにすると、どうなりますか?』
歯の本数が少ないこと自体は、特に問題はありません。
しかし、将来以下のような状態になる可能性があります。

・虫歯になりやすい・・・永久歯に比べて乳歯は軟らかいためです。
・グラグラして抜ける・・・歯の根が自然になくなり、大人になってから(主に20~40歳頃)抜けることがあります。
・歯並びが悪くなる・・・歯と歯の間に隙間が残ったり、永久歯と乳歯の間に段差ができてしまうことがあります。

この内容はあくまでも一般的内容で欠如部位によってかなり治療方針が異なります。
ご心配な方はレントゲン写真をお撮りすると、かなり正確な診断が可能です。

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